道道1180号 目次

路線概要

北広島市Fビレッジにある都市計画公園(運動公園)北海道ボールパークFビレッジと国道36号を結ぶ道道路線である。全長約7.5kmのうち、約2.4kmは上位路線との重複区間、約2.7kmは既存の市道からの昇格区間であり、残りの約2.4kmが新規整備区間であった。この新規整備区間は、ボールパークの中核をなすエスコンフィールドHOKKAIDOが2023(令和5)年3月14日に開業するのに先立ち、同年3月1日に開通した。

北海道ボールパークFビレッジは、プロ野球チームの北海道日本ハムファイターズが本拠地とするエスコンフィールドHOKKAIDOを中核として、商業施設や宿泊施設、認定こども園などを併設したボールパークである。当初の都市計画公園としての名称はきたひろしま総合運動公園であり、道道の路線名もこれに合わせたものだが、ボールパークの名称に合わせて2021(令和3)年4月30日に都市計画公園名を変更した(これに伴う道道の路線名変更は行われていない)。

ボールパークへのアクセス道路は大きく分けて3本ある。既存の市道を改良し、中心部・北広島駅方面へ向かう北進通、千歳線を跨いで国道274号に接続する新設道路の西裏線、そしてボールパークから西進し大曲方面へ向かう道道きたひろしま総合運動公園線である。このうち道道は特別天然記念物に指定された野幌原始林の近傍を通るために、自然環境に配慮したエコロードとしての建設が計画された。道道の整備にあたっては、道道きたひろしま総合運動公園線の整備における環境保全を考える協議会が2020(令和2)年5月から複数回にわたって開催されており、その際の会議資料や議事録が公開されている(→リンク)。協議会で示された重要なトピックについては、本ページの後半で触れることにする。

また、本路線では市道大曲椴山線との交差点にラウンドアバウトが採用・整備された。道内の公道上にある現代型ラウンドアバウトとしては3例目だが、北海道が事業主体となって整備したものとしては初めてであった(既設2箇所は国道上=北海道開発局が事業主体)。人口の多い札幌圏では初の現代型ラウンドアバウトということもあって、札幌建設管理部は交通ルールに関する動画付きのページを公開したほどであった。

種別一般道道
路線番号1180
路線名きたひろしま総合運動公園線
起点北広島市共栄
終点北広島市大曲中央2丁目
通過市町村北広島市のみ
認定日2020(令和2)年3月31日
総延長7.509km
実延長不明
重用延長不明

※総延長等のデータはいずれも2022/4/1現在の道路現況調書による。新規整備区間の開通以前のデータを掲載しているこの版では、当路線は全線が未供用区間とされている。

歴史

2020(令和2)年3月31日
同日付の北海道告示第10488号により、道道1180号きたひろしま総合運動公園線が認定される。
2021(令和3)年4月30日
同日付の北広島市告示第120号により、道道の起点である都市計画公園きたひろしま総合運動公園の名称を「北海道ボールパークFビレッジ」に変更。これに伴う道道の路線名変更は行われていない。
2023(令和5)年3月1日
新規整備区間であった起点~西の里間(L=2.4km)を供用開始。全線開通。

レポート区間

区間区間起点区間終点走行日区間
距離
本編北広島市共栄
(起点)~
北広島市大曲中央2(R36交点、終点)2023/10/257.5km

エコロードとしての整備

「エコロード」は生態学を意味するecologyの「エコ」と道路を表す「ロード」を組み合わせた造語で、自然環境に配慮して整備される道路のことを指すと説明されることが多い。主に山間部の新設道路において、自然環境の保全は重要な課題であり、建設の是非をめぐって紛糾することもある(道内では建設中止となった士幌高原道路が有名な例)。エコロードにおける具体的な工夫については、国土交通省とNEXCO東日本が共同施工している横浜環状南線や、福島県が整備した荷路夫バイパスの解説ページが参考になる。

野幌原始林の近傍を通る本路線では、その環境を保全するためにエコロードとなることが当然求められた(ルート案への反対意見も存在した)。そこで、専門家による「道道きたひろしま総合運動公園線の整備における環境保全を考える協議会」によってエコロードとしてのコンセプトや具体的な対応策についての協議が繰り返し行われ、実際の道路整備に反映された。前述のとおり、その際の会議資料や議事録が公開されているため、具体的に行われた環境保全対策についてまとめていく。

※番号は便宜上振ったものであり、資料中で付番されているものではない。

(1)地形改変量の抑制するための線形選定。道路の新設には少なからず地形改変を伴う。できるだけ現状の地形に沿って建設すれば地形の改変量は少なくなるが、地形に合わせすぎると線形は大きく悪化する。本路線は第3種第2級道路で設計速度は60km/hとされているため、曲線半径は原則150m以上、縦断勾配は原則5%以下とすることが求められており、地形に合わせて大量のカーブや勾配変化を設けることはできない。特に、特別天然記念物指定箇所と河川が存在することから、平面線形については取りうる選択肢が少ない。したがって、平面線形については各種のコントロールポイントをクリアするものとし、縦断勾配は原則値の5%を基本として現状の地形に近づけ、切土の量を減らす。また、大規模な盛土を回避するために橋梁を活用する。

(2)工事用道路の延長減。複数の橋梁を有する本路線では工事用道路が不可欠である。しかし、工事用道路が増えるほど余計な地形改変が増えることになり、原状回復を行ったとしても元の植生を回復するまでには長い時間を要する。したがって、必要最小限の工事用道路で施工する。3号橋(Fビレッジ73橋)では片押し施工を採用し、工事用道路による大規模な盛土を回避する。また、高低差のある箇所には仮桟橋を設置して盛土を回避し、河川横断箇所には土砂を用いず、沈砂池や水槽等で濁水対策を行う。工事終了後は(市道西裏線の工事に転用するものを除いて)全ての工事用道路を撤去し、事前に保管しておいた表土と在来種を用いて緑化する。

(3)工事完了後の緑化。道路建設に伴って土工を行った箇所には緑化を行う必要がある。これには法面の浸食防止や景観面のメリットだけでなく、外来種の侵入を抑制する効果もある。道路沿いの切土に高木を用いると倒伏の恐れがあるため、在来種の中低木などを用いる。工事用道路の建設箇所に関しては、表土を保管し復元する。一部の重要種については移植を行う。

(4)ロードキルの抑制。道路上では、野生動物が自動車に轢かれて命を落とす「ロードキル」が発生する。ロードキルでは動物が命を落とすだけでなく、エゾシカクラスの大きさになれば車両に致命的なダメージを与えることすらある。ロードキルの発生確率を低減するために、橋梁部を除いて高さ2.5mの防鹿柵を設置し、橋梁下にシカを誘導する。小動物の侵入を防ぐため、柵の下部にはドレスネットを設置して隙間を塞ぐ。盛土を減らし橋梁を長くすることはこれらの点でも効果がある。また、両生類等が側溝に落ちても脱出できるよう、スロープ付きの側溝や桝を使用する。光源は昆虫類を誘引するため、交差点以外に街路灯を設置せず、ヘッドライトを点灯した車が長く滞留しないように渋滞対策を行う。その一環として、車両の停止時間が減りやすいラウンドアバウトを整備。

(5)希少生物の繁殖への配慮。本路線のルート付近にはオオタカ・ハイタカ・クマゲラといった希少鳥類や、エゾサンショウウオなどの両生類が生息している。希少鳥類の営巣地に近い区域では、繁殖期に工事を休止することで配慮する。また、工事により改変される区域内の水域は、両生類が産卵することを防ぐため適宜埋め立てを行い、別の安全な水域へ誘導する。産卵期に地形改変を行う場合は、卵嚢が産み付けられていないかどうかを注意深く確認し、発見された卵嚢は安全な水域へ移し変える。スロープ付きの側溝や桝は両生類の安全な移動にも役立つ。

(6)水質への配慮。本路線のルート上には裏の沢川が森林内を曲がりくねりながら流れており、道路と何度も交差する。河川改修を行っていないため、増水時の浸水区域は広い。また、短い橋梁では盛土区間が長くなり、地形改変量が増加してしまう。そこで、長い橋梁を採用し、河川周辺の地形改変を最小限にとどめた。2号橋(Fビレッジ341橋)では、橋台付近に擁壁を設置し、盛土の範囲を狭めた。また、冬季に使用する凍結防止剤(塩化カルシウム)の散布による沿道植物・土壌・排水への影響を類似路線で事前調査し、道路開通後もモニタリングを行う。他にも、工事用道路に敷き鉄板を使用して土砂の飛散を抑制し、濁水対策も行った。

協議会は道道の認定から2ヶ月弱の2020(令和2)年5月に第1回が行われ、供用開始直前の2023(令和5)年2月には第10回を迎えた。供用開始後も、これまでに行ってきた環境保全対策の評価や、今後のモニタリングの方針などを協議しているようだ。これらの協議内容が(公開できない希少生物情報を除いて)インターネット上で公開されていることは、今後同様のエコロードを計画・整備する際の参考になるし、一道路趣味者としても大変勉強になった。改めて、会議資料・議事録へのリンクを貼っておく。→道道きたひろしま総合運動公園線の整備における環境保全を考える協議会について - 空知総合振興局札幌建設管理部

余談: ボールパーク建設の経緯

※道道路線に関する内容は一切ありません。

北海道日本ハムファイターズは、東京ドーム(東京都文京区)に本拠地を置いていた日本ハムファイターズが2004年に北海道へ移転したものである。新たに本拠地となったのは、2001年に開場していた札幌ドーム(札幌市豊平区)であった。札幌ドームは可動構造を採用し、野球場とサッカー場とのモードチェンジができるという異色のスタジアムで、2002(平成14)年のFIFAワールドカップでは日韓合わせて20箇所あった開催地のうちの1つに選ばれている。フラットなコンクリート面の状態にすることもでき、クロスカントリースキーやラリージャパンのスペシャルステージが行われたことすらある。

一方で、モードチェンジが可能な構造は野球場として不都合な面もあった。サッカー場へのモードチェンジを行う際、野球場用の人工芝を巻き取って撤去し、座席の一部を折り畳んで屋外から天然芝を引き込み、90度回転させてモードチェンジを完了させる。この際の転回スペースを確保するため、他の球場よりもファウルグラウンドがかなり広く、可動部が多いことからフィールドシートやホームランテラスの設置も困難であった(フィールドシートは脱着可能な構造とすることで後に設置)。加えて、コンクリートの上に薄い人工芝を敷いたグラウンドは選手への身体的な負担を増やしてしまったといわれている。実際に筆者はイベントで人工芝の上に立ったことがあるが、「コンクリート感」の伝わって来る踏み心地だったことを覚えている(もっとも、他のドーム球場の人工芝に立ったことはないので、正確な比較はできないが)。

球団にとって最大の問題は、ドームを管理する株式会社札幌ドーム(札幌市等が出資する第三セクター)との関係であった。球団はドームのリース料に加えて1試合ごとの使用料も支払っており、飲食店やグッズの販売収益に関しても、その多くがドーム側に流れてしまっていた。そのため、観客動員実績が好調であっても球団としての収益はあまり上がらず、経営に影響を及ぼすほどであった。当然ながら球団側は値下げ交渉を行うわけだが、ドーム側はこれを拒否しただけにはとどまらず、なんと値上げを行ったという。その他にも、プレー環境の改善や利用客の利便性向上のための設備改修をことごとく拒否される、物販コーナーの運用の自由度の低さなど、球団経営上不都合な点が多く、札幌ドームに居続けるメリットは薄くなっていった。

そこで、契約面が足枷となっていた札幌ドームを使い続けるのではなく、球団自らが運営する新球場を建設する構想が2016(平成28)年に明らかになった。(札幌ドームの出資元である)札幌市は引き留めに向けた方策を講じない一方、札幌市に隣接する北広島市ではこれにいち早く反応。広島町時代から構想がありながらも実現できずにいた総合運動公園用の広大な土地があり、土地の無償貸与や固定資産税・都市計画税の10年間免除など破格の条件を提示して名乗りを上げた。札幌市も慌てて引き留めに走ったが、北広島市よりも面積の広い候補地を提示することはできず、候補地周辺の住民の反発を招くなどの失策も重なったため、2018(平成30)年に北広島市への移転が決定した。

こうして北広島市に建設された新球場は、野球場だけではなく、商業施設や子供向け施設なども併設された、「一つの街」に近いものとなっている。球場そのものに関しても、野球を観戦する以外の楽しみ方が豊富に用意されており、試合のない日でも飲食店や温泉・サウナを楽しむことができる(念のためフォローしておくと、札幌ドームにもキッズスペースや展望台などはあった)。現時点では最寄駅から距離があり、アクセス道路のうち西裏線が未開通と、アクセス面には大きな課題があるが、新駅が開業しアクセス道路が完成すればこの点は大きく改善され、より一層の賑わいが見られるだろう。

球団は「Sports Community」を理念とし、「スポーツと生活が近くにある、心と身体の健康をはぐくむコミュニティを実現するために、地域社会の一員として地域社会との共生をはかる」ことを掲げている。新たなボールパークはこの理念への大きな前進に違いない。